第28回 クラウドの請求書作成サービス
ここ数年の間に、複数の会社からクラウドの請求書サービスがリリースされました。
請求書クラウドの基本的な機能は、顧客登録、見積書、請求書の作成が簡単にできて、経理業務の効率化により、コストと時間の削減効果が望めるというもの。
さらに、入金の管理、売上分析から決算書作れますというものまであります。
請求書はただ作成できるだけでなく、オンラインで作成したものをそのまま郵送までワンストップで依頼できるというところが大きな特徴です。
それぞれの会社の機能比較をしているサイトは結構ありますのでそちらにお任せして、ここでは、よく比較される6社のリリース時期や成り立ちを追ってみたいと思います。
●2008年7月「Zohoインボイス」 サービス開始
運営会社:「ゾーホージャパン株式会社」
資本金:9000万
CRMやグループウェア等中小企業向けトータルクラウドソリューションを提供しているZohoシリーズの請求書版。本社は米国。
以前よりリリースされているCRMからの派生のようなイメージ。
他のサービスに比べて昔からリリースされているようだが、クラウド請求書サービスの大きな特徴である、請求書の配送代行というところにはまだ力を入れてないようで、「日本へ郵送する場合は、到着期間・料金が余分にかかってしまいますので、ご注意ください」との説明あり。
日本への郵送の場合は1通につき、$1.5×2クレジットなので$3かかる模様。
●2011年10月「MakeLeaps」サービス開始
運営会社:東京都目黒区「メイクリープス株式会社」
資本金:不明
東京都の「Webnet IT株式会社」によってリリースされ、2014年7月にこの事業を法人化して、現在は「メイクリープス株式会社」が運営。
両社の住所が全く同じですね。
●2011年11月「misoca」サービス開始
運営会社:愛知県名古屋市「スタンドファーム株式会社」
資本金:18,035,015円
サイトの会社概要によると、代表の「豊吉」さんの経歴が「2002年より名古屋にてフリーランスとしてWeb制作を始める。趣味はマラソン。CSNagoya勉強会共催者、名古屋Ruby会議スタッフ、OSCNagoya2011実行委員長など」と書いてあります。
自身がウェブエンジニアのフリーランスで経験してきたニーズから立ち上げて増資によりベンチャーキャピタルの資金を入れた様子が伺えます。
オープンソースカンファレンス名古屋の実行委員長をやられていたという、OSS畑の方なのが面白いです。
●2013年3月「freee」サービス開始
運営会社:東京都品川区freee 株式会社(旧CFO株式会社)
資本金:490,000,000円
freeeは請求書クラウドではなく、全自動のクラウド会計ソフトという路線で、個人事業主の青色申告、確定申告や法人の決算書作成を全面に出しています。
見積書、請求書作成機能もありますが、配送代行等はやっていないようです。
●2013年6月「RaQool」サービス開始
運営会社:大阪府大阪市株式会社ソーシャルデザイン
資本金:?(2008年時点商工会議所情報100万)
顧客管理、見積作成、請求書作成、請求書の配送代行までできるようです。
サービスリリース時のプレスリリースによると開発のきっかけとなったのは、学生ベンチャーとして起業してから「経営効率の悪さに悩まされた自身の体験からだ」とのこと。
●2014年5月「MFクラウド請求書」ベータサービス開始
運営会社:東京都港区株式会社マネーフォワード
資本金:698,445,000 円
もともと「MFクラウド会計」を提供していて、その延長で請求書エディションをリリースした模様。
2014年6月には「MFクラウド会計」がMisocaと連携して、Misocaでつくった請求書データを会計ソフトへ自動取得できるとのこと。
競合でもあり、協業もしているのでしょうか。
MakeLeaps、freee、MFクラウドは会計機能を全面に出していることもあり、法人向けのアピールだけでなく、税理士とのアライアンスプログラムを用意していることも特徴です。
クラウド請求書のターゲットは、どのサービスも個人事業主、中小企業、ベンチャー向けのようです。
ではここで、取引先との機密情報をクラウド上に保管するという視点で考えてみたいと思います。
Salesforceをはじめとした顧客管理システムのクラウド化が浸透しているところを見ると、顧客情報を自社の管理範疇外に置くのはどうなのかという議論と心的抵抗は下がってきているのかもしれません。
しかし、これらのクラウドを利用して自社に請求書が送られてくる側として考えると、「自社が発注した件名と金額という、生々しい情報を、この会社は外部委託のクラウド上にデータ保管しているのか!それは機密情報じゃないのか」といわれそうな気もします。
つまり、実質の利用者が中小、個人事業主だとしても、請求書発送先が大手上場企業等だと、外注先にクラウド請求書の利用禁止!という流れになってしまうのではないかなあと思います。
そこで今回ご紹介するのは、自社で用意したサーバーにインストールすることが可能な、請求書管理システム「SimpleInvoices」です。
■SimpleInvoices
http://www.simpleinvoices.org/
こちらに、触っていただけるデモサイトもご用意しました。
http://simpleinvoices.opensourcedemo.biz
ユーザー名:demo@opensoucedemo.biz
パスワード:demo
使い方の流れとしては、まず請求書の欄に記入する要素となる以下の作業を行います。
・顧客の登録
・請求者の登録
・製品の登録
そして、請求書のフォーマットを作成すれば使い始めることができます。
名前の通り非常にシンプルです。
●機能
・請求書のフォーマット作成
請求書だけでなく、見積書、領収書など、フォーマットが似ているものなら何でも定義することができます。
・請求書の作成
予め作成した製品情報、顧客、請求者を選んで、製品の数を指定すれば、請求書ができあがります。
備考欄などにフリーでテキスト入力することができます。
・PDFへのエクスポート
デフォルトだと、PDFへのエクスポートの場合に日本語が文字化けします。
pdfだけでなく、word、excelにエクスポートができ、こちらは日本語もちゃんと出力されます。
・Eメール送信
作成した見積書、請求書、領収書などをメールで送信できます。
・paypal連携
面白い機能です。請求書データにpaypalリンクを挿入し、相手がpaypal経由で支払うことができます。また、支払が行われた場合は自動的にSimpleInvoicesの支払い情報に反映されます。
・繰り返し自動送信
作成した請求書をスケジュールで指定した日に自動でメール送信することができます。また、これを期間指定で繰り返すことも可能です。
月末に慌ただしく請求書発行業務をする必要がなくなり、定期的に同じ金額同じタイトルの請求書を発行するような場合に、とても便利な機能ですね。
・Ewayカード決済機能
オーストラリアにあるEway社の決済機能を利用して、顧客からカード決済の引き落としをすることができます。
上記のスケジューリング機能と組み合わせれば、毎月X日に請求書発行とカード引き落としを自動で実行するなどが実現できます。
こちらも優れた機能ですね。
・その他
製品の在庫数を登録することで、請求書を発行した時点で自動で在庫数が減るという在庫管理機能や、商品ごとの利益率を確認したり、顧客ごとの売り上げがわかるレポート機能など、簡単な販売管理や分析機能も持っています。
こんなに優れた機能を持っているのに、日本では全くといっていいほど紹介されている記事がありません。
また、海外ではこれをそのままホスティングサービスにしている会社や、カスタマイズしたものをクラウドサービスとして提供している会社が多数あります。
請求書をクラウドで使用するのはちょっと抵抗があるので、自社のサーバにセットアップして利用したいという方や、これからクラウド請求書サービスに新規参入したいという方には向いているのではないでしょうか?
ちなみに私の会社、株式会社ギークフィードではSimpleInvoicesの構築、運用サポート、カスタマイズ等を承っておりますので、これらを依頼したい方は是非お声がけ頂ければと思います。
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