「The Headmaster Ritual」 The Smiths (Morrissey-Marr) 85Rough Trade

陰影。漢字のルックスが言葉を良く表しています。
ザ・スミスは、80年代英国、マンチェスターの陰影を巧妙に音楽で体現しています。曇り空と工場と湿地帯。

失業者がパブに集う。大英帝国過日の栄光へのプライドは、米国への劣等感や、米国へ追随する英国政府への嘲りとも、ないまぜになっている。

自虐的な皮肉を高踏的な歌詞とヨレヨレのメロディーで歌うモリッシー。
決してチョーキングをしない、非ブルース系ギタリストであるジョニーマーは、「陰影」に富んだコード進行をアルペジオやストロークで彩っていく。

「The Headmaster Ritual」は2ndアルバム『Meat Is Murder』の1曲目。
しょっぱなからマーの独特なコードストロークに圧倒されます。こんな変な和音の曲
は世の中にそうそう無いでしょう。

タイトなリズム隊に支えられて、エレキ/アコースティックが複数鳴るギターは、緻密に絡み合い、美しい「陰影」を施しています。

その上に、圧倒的な存在感で君臨するモリッシーの自虐ボイス。
『学校キライ、お家に帰りたい』てなことをヨーデルのようなフニャフニャ声で歌っていますが、そんな態度なのに英国の気品がギリギリ残存し、漂い、マーの緻密なギターワークとつかず離れずに交わりあい、この変態な曲の「陰影」を更に深めてい ます。