「Walk On The Way Of Life」 (矢野顕子)78Philips

矢野顕子さんのアルバムは当たり外れが大きい。

個人的には世評ほどの大天才とは思わない。もちろんオリジナリティと才能に溢れているんだけど、学者的で、エリートで、リスナーとの距離がある。品が良すぎるテクニックの人。

聴き手の懐に飛び込み、胸ぐらをつかんで自分の感性を叩きつけ、赤裸々な内面を曝け出す。自己顕示欲と名声と金銭欲との間で危うい綱渡りをしながら、音楽を作っていくのが、ポップスターの魅力ですが、彼女にはそんな「弱さ」や「愚かさ」が感じられない。おそらく本当に強い人間なんでしょう。

「Walk On The Way Of Life」は同名ライブアルバムのラスト。

このアルバムは当たりです。そのポイントは坂本龍一。矢野顕子の堅くエキセントリックなピアノ演奏も素晴らしいが、バックのYMOの演奏がポップな軽味を巧みに施しています。なかでも教授のインチキな音色のシンセが素晴らしい。

坂本龍一は、頭と品が良い人とされていますが、私は全く違うと思います。

日本音楽史上有数の、下世話でわがままで派手好きなポップスターでしょう。たまたまアカデミックな表層をまとっているだけ。

高踏すぎる音楽に教授が下世話な一撃を加え、全体をまとめる細野氏。非常にレベルの高いところで化学反応が起こっている稀有な例でしょう。

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