「祈りの季節」(岡村靖幸) 90EPIC

三島由紀夫が言い残した通り、戦後、日本は大切なものを次々と失ってしまいました。

その過程の中で、その喪失に翻弄されていることを隠さずに露呈し、少しだけ反抗したのが岡村靖幸でした。

「祈りの季節」。『SEXしたって誰もがそう簡単に親にならないのは赤ん坊より愛しいのは自分だから』『幾千の童話の業の深い輩と僕らは似ている』

同時期にこの喪失に鋭く気づいていたのが森高千里でしたが、彼女がしたたか、かつ軽やかに自己の再構築を行ったのに較べ、岡村は危機の最中にいる自身を豊かに音楽作品として残し、短期間で沈没してしまいました。

プリンスのサウンドプロダクションを日本的に咀嚼し、自身の揺るぎない音として提示した作品群を今聴くと、自分の弱さをここまで赤裸々に吐露した勇気に感動するとともに、この作品より18年の経過のうちに起ってしまった更なる喪失を悲しまずにいられません。

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