中谷美紀 「my best of love」(大貫妙子) 96gut

坂本龍一のソロアルバムに決定的な傑作はありません。

細野晴臣の70年代のソロ諸作、高橋幸宏の『ニウロマンティック』はともに自身の味のあるヴォーカルと存在感が突出していますが。

教授はヴォーカリストではないことが一因ですが、彼は自分の内面のドロドロを作品として昇華するのがカッコ悪いと考えているのか、とも思います。

但し、プロデューサー、アレンジャーとしては70・80年代に矢野顕子、大貫妙子、南佳孝、高橋幸宏といった同年代のソングライターの作品を卓越したセンスでアシストし、傑作としています。

そんな坂本龍一の90年代の代表作は中谷美紀のアルバム『食物連鎖』でしょう。高踏的で無機質な坂本のサウンドと中谷の細い声はかなり相性が良く、一聴無個性な印象を与えます。

しかし、彼女のヴォーカルの芯には、はかない強さが秘められていて、その美しさを絶妙に引き出した、素晴らしい仕事と言えます。

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