「Les Histoire d’A」 Les Rita Mitsouko(Ringer/Chichin) 86Virgin
80年代は「エッジ」でした。ポップミュージックは70年代に成熟し、80年代に突堤にぶち当たったのです。ぶち当たって砕けた破片たちは無節操に退廃した輝きに満ちていました。
90年代以降の音楽は「編集」に優れているだけだともいえるでしょう。
エッジの最先端は英国だったわけですが、そこに旧大陸のプライドが加味されたのがフランスの音楽です。
男女2人組のリタミツコはコンチネンタルなスノビズムをおおらかに謳歌します。言わば、ねちっこい性欲と食欲。朝寝坊とヘビースモーキング。体臭と体毛。ニューウェーブをざっくりと咀嚼し、だらしなく気取った「Les Histoire d’A」に島国人の繊細さはありません。
カトリーヌ・ランジェのヴォーカルは蓮っ葉なアバズレ声。自身たっぷりに怒鳴り、笑う。絶対に朝ごはんは作ってくれなさそうです。