「Waltz for Debby」 Bill Evans Trio 61RIVERSIDE
1961年、ニューヨークのジャズクラブ「ヴィレッジヴァンガード」でのビル・エヴァンストリオのライブ。
恐らくは小さなライブハウスなのか、入口のドアの開閉音らしき音、グラスが触れ合う音、観客の雑談などが、この歴史的名演の録音に混じってしまっています。
しかし、これらの自然な物音が絶妙な空気感を醸し、クールな当時のNYの夜を想像させます。
エヴァンスのピアノは神がかったほど幽玄に青白く燃え、クールな夜にデカダンな味わいを色濃く漂わせます。
ピアノという楽器は指先のほんの小さな動きを精巧に音像化する、極めて繊細な楽器といえますが、エヴァンスはその音像を恐ろしいまでに刻銘に抽象化しています。
ピアノ、ベース、ドラムスの3人だけの演奏が、それぞれが孤高に屹立しつつも、自在に絡み合い、静かな高みに達し続けるこの録音は、米国のジャズの絶頂の瞬間を記録していると言えます。