太田裕美「Rainbow City Light」(松本隆/筒美京平)77Sony
1970年代。
歌謡曲の絶頂期にヒット曲を量産した筒美京平にとって、太田裕美さんの、舌足らずでいながら、母性的なおおらかさと、知的な賢さをも併せ持った歌声は、大いに創作意欲をかき立てる素材だったのでしょう。
「レインボーシティーライト」は、カントリーや往年のアメリカンポップスを70年代米国風に料理した、カーペンターズのテイストを下敷きにしていますが、単なる引用に終わらないのが、筒美先生。
複雑なメロディーを、太田裕美さんのダブルボーカルでキュートにハモらせ、力技でキャッチーなジャパニーズポップスに仕立てあげています。
いかにも松本隆らしい、まるで実体のない歌詞の浮遊感がそこに絡み、日本の音楽だけが持つ、ある意味いびつとも言える程の多幸感が、ふんわりと提示されています。
これぞまさに、手弱女日本のお家芸。単細胞アメリカの単純な幸福とは、対極に位置しています。