安全地帯「Lazy Daizy」(松井五郎/玉置浩二) 84 Kitty

三十年以上に渡って、尽きない創作意欲。
湧き上がってきたものを、素直に吐き出し、発表し続ける。
玉置浩二は、決して枯れることのない天才です。
 
年を経るごとに自らを飾る虚飾を脱ぎ捨てて、現在では、怖いものなし、の状態になりつつありますが、それと正反対に30年前は、怖いものだらけだったかのように、幾重にも虚像を重ねていました。
 
そんな安全地帯初期の「Lazy Daizy」。
ここでは、虚飾と実像のせめぎあいが予期せぬ混淆を産んでいます。
 
ニューウェーブ直系のトリッキーなギターの鋭い音色に彩られて、都市生活者の乾いた官能の世界を冷たく構築する。恐らくは、玉置氏の本能は、全く乾いてはいないのですが、虚飾の鎧で、冷たく自らを防御しています。
 
しかし曲の終盤、複層的に流麗なストリングスが流れ込んできて、そのたおやかな音色によって、虚飾の鎧が溶解されていきます。
 
虚飾にも、実像にも、天才の魂が惜しげなくつぎ込まれているわけですが、その相反する要素が、反発しながらも、溶け合っていく。
 
膨大な作品群のなかでも、特筆すべき瞬間といえます。