Martha And The Vandellas「Heat Wave」Holland/Dozier/Holland 63MOTOWN

サウンドオブヤングアメリカ。
何と初々しく、爽やかで、かつ多幸感に満ちたキャッチフレーズでしょう。

ソウルミュージックが勃興期から著しい成長期に移った60年代初頭。若々しく、ポップなヒットソングがデトロイトから量産されました。
 
『ヒートウェイブ』にはそんな破竹の勢いが、はちきれんばかりに詰まっています。
歌詞は読んでいませんが、まず間違いなく、『Heat Wave』とは恋が始まる時期の燃え上がる波なのでしょう。
 
世の中のほとんどの事柄は、未知の光の彼方にあり、無限に開かれた方向性のうち、どこへ進みつつあるのか、全くわからない。でも、走るスピードの加速感には、確かな手ごたえがあり、そんなことを意識する暇もないほどに、疾走の快感に身を任せている。
 
しかし、彼女たちは無意識下では実は気づいているのです。この疾走は、いつかは失速し、上昇は下降に転じ、様々なしがらみを維持することに重きをおくようになってしまうことを。
 
背後に忍び寄る閉塞への予感が刻印されているからこそ、無邪気な迸りは、何倍もの感動を呼びよせるのでしょう。