Morrissey 「The Teachers Are Afraid of the Pupils」(Morrissey/Boorer)95RCA

パンクから派生したニューウェイブの時代もそろそろ終わろうとしていた1980年代中期。

「ザ・スミス」は停滞する英国を象徴する自虐と諧謔のバンドでした。

1988年のバンド解散後、26年が経過したわけですが、驚くべきは、ヴォーカルのモリッシーがこの間、着実にキャリアを重ね、遂には、英国を代表する、大御所アーティストに成長したことです。

自虐的な人が着実なキャリアを一歩一歩、歩むなんて!
26年前、私も全く予想していませんでした。

モリッシーがソロキャリアで獲得したレベルは、ズバリ、「中の上」です。

ザ・スミスの至高の作品群。あらゆる条件が、惑星直列のように、奇跡的にマッチして産みだされた、降臨の瞬間だったのでしょう。

しかし、著しくクレバーなことに、モリッシーは、奇跡の降臨が二度と起きないことを冷静に認識し、模倣もアンチテーゼも行わず、自身の生来の音楽的資質を、ゆっくりと、着実に、深化させてきたわけです。

29歳でピーク期間は終焉してしまった。しかし55歳の現在まで、いわばセカンドベストの充実を継続させる。

英国的な懐の深さを感じますが、もしくは昭和の日本的ともいえそうです。