久保田早紀 「朝」(久保田早紀) 79CBS/SONY

ひっそりと、穏やかな佇まい。ともすると、聞き流してしまう。
決して第一印象は強くない。
 
しかし、端正な音楽にじっくり対峙したとき、また、何度も繰り返した時、気づかされるのは圧倒的な声の魅力でした。
 
自作の折り目正しいメロディーを、慎重に、精確に辿る、クールに細い声。
 
ギラギラした上昇志向や、強烈な自我が宿るセックスアピールは全くありません。
 
市井の猥雑さを静かに拒否するような、超然とした姿勢。
 
しかし、隠しきれないセクシャリティーがそこから滲み出ているのです。
 
未だ残存する、少女のあどけなさ。決して芯の強さはなく、常に揺らぎ続ける、豊饒な感性。猥雑さから逃避していることから生起する、脆弱さ。
 
それらの儚い要素が、ゆっくりと、ひそやかに成熟されつつある過程。
 
その微細な揺動が声に宿っているわけですが、果たして自身は意識しているのか、いないのか。
 
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