薬師丸ひろ子「Woman “Wの悲劇”より」(松本隆/呉田軽穂)1984東芝EMI

ここ数年、コンサートを積極的に行っていたことは、知っていました。また、大瀧詠一作曲の「探偵物語」やこの曲が、1980年代のスタンダードとして、屈指の名曲であったことは再認識していました。

そんな折、2019年のライブ映像を見て、震えました。

デビュー当時の彼女は、合唱団風だと揶揄されるほどストレートな発声で、折り目ただしく澄んだ美声を聞かせていました。その佇まいは、凡百のアイドル歌手とは一線を画した、ある意味ぎこちないとも言える端正さでした。

そんな彼女の30年後の堂々とした歌いっぷり。これは決して過去を懐かしむショウではない。どうしても、今この曲を歌わなければいけない、表現者としての必然性がヒシヒシと伝わってくる、素晴らしい歌唱でした。

希代の天才、玉置浩二氏との結婚生活など、おそらくは、創造を超えるほどの深い年輪を刻んでも、全く失われていない、ピュアネス。

自粛が潰えたのち、またステージに立っていただくことを願うばかりです。