山下達郎「WINDY LADY」(山下達郎)1976RCA

山下達郎のデビューアルバム『CIRCUS TOWN』の超絶ファンキーチューン。
演奏は米国のスタジオミュージシャンですから、グルーブが本物なのは、当然ですが、驚くべきは、弱冠23歳の日本人が、ブラックミュージックの精髄を完璧に咀嚼した曲を作り、単身ニューヨークで本物の強面ミュージシャンにアレンジや演奏を指導したこと。ウィキペディアによれば、メチャクチャ緊張したらしいですが。

シュガーベイブが、気心の知れた仲間たちや永遠の師匠である大瀧詠一に囲まれた、青春の記念碑だとするならば、本気にプロとして始動したのが1976年というわけです。それから44年、山下達郎のやっている音楽は、本質的に全く変わっていません。1950年代~1960年代の黒人音楽を中心とするポップスの文脈をベースに、流麗で心地よいグルーブに乗せ、コアな音楽ファンではなく、マスに届けていく。

70年代当時、日本のミュージシャンはほとんど、ブルースをベースにしたブリティッシュロックに傾倒していました。米国ではなく、英国。ポップスではなく、ロックがかっこいいとされていたのです。しかし、ド級のポップスマニアである自らの嗜好に忠実な達郎氏は、安易に風潮に迎合することなく、クオリティ面でもポピュラリティ面でも大成功を収め、ジャパニーズポップス最大の大御所となったのです。

しかしと言うべきか、なのでというべきか、実は本音を言うと、ここ数年の作品よりも、「WINDY LADY」の初々しい輝きのほうが、圧倒的に心を撃つのですが。

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