「And She Was」Talking Heads (David Byrne)1985 Sire

最近、90年代~00年代のデヴィッドバーンのソロアルバムを何枚か聴いてみました。80年代、トーキングヘッズは、かなりメジャーな存在で、知的かつアグレッシブなサウンドは、日本でも高く評価されていました。私のお気に入りのバンドの一つでもありましたが、トーキングヘッズ解散後の、リーダーでヴォーカル/ギターのデヴィッドバーンのソロアルバムには、興味が薄れていました。

デヴィッドバーンのヴォーカルは、強く父性を帯びています。おおらかで強靭な懐の深さを体現する暖かい声は、優しい雄大さを紡ぎます。知的な先鋭性とエキセントリックなサウンドデザインが評価されたトーキングヘッズでしたが、デヴィッドバーンという、卓越した才能を持つ稀有なヴォーカリストは、単体でも素晴らしい魅力を放っていたのです。

「And She Was」は「Hey!」というバーンの掛け声とスネアドラムの一撃で始まります。生命の尊さを寿ぐ歌詞と、ハートウォーミングなメロディー。ベースやドラムもシンプルに力強い演奏です。クル―ナ―のように、微妙な音程の揺れをゆるやかに操るバーンのヴォーカルは、偉大なソウルマン、例えばサムクックやマーヴィンゲイのマナーを正統に継承しています。