第58回 10分間の不快イ話

暑さのせいか(年齢のせいか?)なんだかイライラする。
こんなときこそ爽やかな話題を提供できればいいのだが、根が正直なため自分にウソがつけない。

今回は、最近、遭遇した不快な出来事を書いてみる。

【注意】不快な思いをされる危険がありますので、心穏やかに過ごされたい方は、読まずに最後の行まで移動してください【注意】

とある夏の朝。
適度に混んだ電車(座席は満席で吊り革もすべて占有者がいる状態)。
入口付近に女性3人。

年のころは・・・とチラ見をしても、女性の年齢はわからない。。。
30歳~55歳くらいの勤め人と推測。

どこにでもいるようなおばさんたちなのだが、その3人、お喋りがうるさいのだ。

車内を見渡すと老若男女の7割はスマホやガラケーをいじっており、2割は静かに目を閉じて、残り1割の人は本を読んだり、化粧をしたり、納豆巻きを食べたり、いちゃついたりしてる。(でも、揺れる電車でする化粧はしないほうがまし。というか、あの人はしてもしなくても変わらないか。。。納豆巻きは食べちゃダメでしょ。納豆の匂い
が嫌いな人もいるし。スメハラか?。。。そして、そこの高校生、電車でいちゃつくなよ。猫だって場所を選ぶでしょ)

何はともあれ基本的には電車内ではみんな無口だ。
その中で3人のおばはんは傍若無人に喋り続けている。

「あの部長、仕事もできないくせに○×△」
「経理のA子はだめね。○○の××が△なのよ」
「そうそう、だから×○△」

「こら!うるせぇぞ、お前らの家の居間じゃねぇんだよ!!」と叫びたい気持ちを抑えながら無表情でパズドラを続ける私。

と、その時、車内に「ピロピラピロピロ~♪」という賑やかな着信音が・・・。

キョロキョロと発信源を探すおばはん3人。
そのうちの一人が
「車内でケータイをマナーモードにしないなんて非常識よね~」

「非常識なのは、お前らのお喋りだぁ~っ!!」とまたしても心の中で毒づいた瞬間、パズドラはGAME OVER。。。

茫然とGAME OVERの画面を見つめていると、「やぁ、久しぶりですね」という男性の声。

顔を上げると、目の前に知人のAさんが。
「タコザンギさんもゲームをするんですね?熱中してましたが、なんのゲームですか?」

タコ「あっ(しどろもどろ)お、おはようございます。パ、パズドラをちょっと・・・」

知人A「パズドラ?それはなんですか?」

タコ「パズル&ドラゴンズというゲームで、その実態はパズルなのか、ダンジョンゲームなのか、モンスター育成ゲームなのか、よくわからないどうでもいいゲームです」

知人A「あ~、あのテレビCMで、外人の若い男女が「パズー」「ドラー」と意味不明に呼びかけあってるヤツね。ぷよぷよとポケットモンスターを合わせたような子供騙しゲームですね」

タコ(あ、知ってるじゃん。その子供騙しに熱中してたのだよ、俺は)「ええ、そうなんです。いい年してすみません」(なんで謝るんだ、俺)

その時、あの3人のばばあ、じゃなくておばさんが「いい年してゲームしてたらしいわ」「バカみたいね、ふふ」と言った(ような気がした。。。)

知人A「ふふん、どのくらい入れ込んでるんですか?」

タコ「どのくらいと言われても・・・」
(CMで見ただけの人に説明するのは難しいのだ)

知人A「ランクはいくつですか」

タコ(え?)「あ、ランクは今135ですが。。。パズドラをやったことあるんですか?」

知人A「135ですか?!・・・ふふふ・・・それはそれは」

タコ「え、まぁ、そんなもんで、すみません」(またまた、なんで謝るんだ、俺)

知人A「この前のレアガチャのゴッドフェスで覚醒オーディンをゲットしましたよ」

タコ「覚醒オーディン!!」(欲しい。。。しかし、なんだこのオヤジ、メッチャやり込んでるじゃん)

知人A「魔法石も300個くらい貯めましたよ」

タコ「・・・」(魔法石はすぐ使っちゃうから、今は手許に4個しかない・・・。お金でもなんでも必要なものを貯められないんだよな。だからオレの人生は自転車操業だ・・・なんだ?この敗北感は・・・)

知人A「ところで、タコザンギさん、薄いですね」

タコ「えっ!」(なんだよ、いきなり。。。思わず頭に手が・・・)

知人A「いえいえ、影が。」

タコ「ハゲが!?」(薄くなったのは意識していたが、面と向かってハゲと言われるとは・・)

知人A「いえ、違いますよ。ハゲだなんて、そんな失礼なことは。ただ、存在感がないから影が薄いと言ったのです」

タコ「あ、そうですか。よかった(ホッ)」(って、安心していいのか?俺)

知人A「ハゲといえば、なんかの本(※)でアデランスが調査した世界薄毛ランキングというのを見ましたが、日本は14位でしたね」

タコ「14位?それは順位としてはどうなんですか?」

知人A「1位がチェコ、2位スペイン、3位ドイツで、この3つの国は薄毛率は40%以上でしたね。5人に2人が薄毛、というかハゲっちゅうことです」

タコ「で、日本の薄毛率は?」(なんで俺はこんなに真剣に聞いてるんだ?)

知人A「日本はたしか26%くらいだったかな。。。4人に1人がハゲ」

タコ(4人に1人か・・・それにしても電車内でハゲハゲ言うなよ。このハゲ!。って、Aさんは同年代なのにフサフサで黒々してるなぁ。きっと何か悪いことしてるな。うん、そうに違いない)

知人A「あ、どうかしました?」

タコ「いえ。。。そのハゲ率上位の国には何か理由というか原因があるんですかね?」

知人A「薄毛率です。ハゲハゲ言わないで下さいよ」

タコ「・・・」(自分のほうがハゲハゲ言ってたのに)

知人A「食生活に原因があるようですよ。1位のチェコは濃い味付けの肉料理中心で魚や野菜はあまり食べないらしいです。スペインは食事の回数が1日5回で脂っこい料理が中心みたいです。そしてドイツはビールが原因みたいです」

タコ「ビールですか?ビールの何がハゲ、じゃなくて薄毛に影響があるのですか?」

知人A「ビールを肝臓で分解するのにシスチンというアミノ酸を大量に使うらしいんですが、このシスチンというのが、実は毛髪の構成物質らしいのです。だからビールを呑みすぎると毛髪の成分を消費しちゃうんですね。まさに消毛(しょうもう)、なんちゃって。ビールで髪の脱色もできますしね」

タコ(ビールで脱色は関係ないだろ)

知人A「タコザンギさんはビールお好きでしたね。ふふふ」

タコ(なんだ、その意味深な笑いは?)「ええ、今日あたりビアガーデンに行こうかなと」(でも、やめようかな・・・)

知人A「やめようかな、って弱気ですね」

タコ(えっ!俺、やめようかな・・・って心の中で呟いただけのはず・・・)

知人A「心を読んだのですよ」

タコ「!」

知人A「もちろん冗談ですよ。私が人の心を読めるわけはないです。ただ・・・」

タコ「ただ?」

知人A「タコザンギさんの心の声が勝手にわれわれの頭脳に直接話しかけてくるのです」

タコ(えっ!何?俺は「サトラレ」か?「虎よ、虎よ」の女教師か?)

知人A「だから、化粧の人は中断しちゃったし、納豆巻きの人はそのままポケットにしまっちゃったし、高校生は2つ前の人目の少なそうな駅で降りました。車内の人はみんなタコザンギさんに興味津々ですよ。
あ、ただ、あの3人の女性は「やられたら倍返し」って言ってますが」

タコ(ああ、なんだこの恥ずかしいけど、不快な気持ち。穴があったら埋めたい。いっそのこと、このまま電車ごと腐海に沈んでしまえばいいのに・・・。それとも滅びの言葉を使うか・・・。って、これもすべてダダ漏れか?)

知人A「不快なのはわかりますが、「腐海(ふかい)」は「風の谷のナウシカ」で、「滅びの言葉」は「天空の城ラピュタ」です。いずれも宮崎駿監督作品ですね。ちなみに最新作は「風立ちぬ」ですが、観ましたか?」

タコ(俺はアニオタじゃないけど、ここは滅びの言葉しかない・・・行くぞ!!)

「ピルス!!!」

知人Aほか一同「わぁっ、毛が~!毛が~!って、ピルスはビールですから。もうええわ」(昭和のツッコミ。なんのこっちゃ)

そして、なんやかんやあって、2013年8月2日午後11時21分50秒「天空の城ラピュタ」の主人公(バズーとドーラ、じゃなくてシータ)と同時に呟かれた滅びの言葉「バルス!」は1秒間に14万3199件というツイート世界新記録を更新したが、Twitterサーバーは滅ぶことなく(ダウンすることなく)、進化を続けるテクノロジーの力を見せつけたのでした。めでたし、めでたし。

※なんかの本・・・日経プレミアPlus vol.8 連載「世界経済訳ありランキング」門倉貴史著

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