第72回 優柔不断

秋ですね。秋はひとりで考える季節です。
裏庭の虫の声を聴きながら、つい物思いに沈んでしまうのです。

・・・リンリン鳴くのは鈴虫なのかなぁ。でもよくよく聴いてみるとチンチロリンとも聞こえるなぁ、松虫なのかもしれない。いや実は、松虫のふりをしたこおろぎなのかもしれない。

しかし、別の虫の振りをすることは、虫にとってどんなメリットがあるのだろうか?

外敵から身を守る、って何の根拠もないなぁ。そもそも鳴く虫はオスのはずで、メスに対して、ボクはこんなにきれいな声で鳴いてますよ、ってアピールしてるわけで、声がいいからといって、虫としての優秀さをアピールできるものだろうか?

全くやる気がなくて適当な性格の虫でも、声がいいだけで、きれいで働き者のメスを手に入れるケースはありそうだ。メスに働かせて、自分は仕事もしないで、朝から晩まで歌を唄いながら、テキーラかラム酒なんか飲んでいそうだ。

舌先三寸、口先三寸で生きていけるのが虫の世界なのだ。実際は羽先三寸なのだが。

人間界にも「オレの胸先三寸だ」なんていう人がいるけど、「胸三寸」の間違いのような気がする。
(広辞苑や大辞林を調べてみたけど、「胸先三寸」は載っていなかった。胸の先、三寸なんて、ちょっとモヤっとするし)

「胸三寸」は、胸の中という意味で「胸三寸におさめる」なんて用例がある。
「ことの成否は彼の胸三寸だ」なんてのもある。

この「彼」の責任は重大だな。彼の胸三寸で「重要なこと」が成功するか失敗するかが決まるのだから。(なんか「新解さんの謎」(赤瀬川源平著)みたくなってきましたが・・・)

「彼」は決断力があるに違いありません。
「決断力」は辞書によると「判断に迷う場面で、一つに決められる能力」らしいです。用例としては「優柔不断で決断力に欠ける」。

どうやら「決断力」があることが「善」のようで、「優柔不断」は「悪」というか「失格」のようです。

確かに今の世の中は「決断」を迫られることばかりです。
まず、朝目覚めたときに、布団から起きるのか、二度寝するのか決めなければいけません。

起きたならば、歯を磨くのか否か、顔を洗うのか、服を着るのか、会社へ行くのか、会社へ行くのに電車に乗るのか、電車の行き先はどこか、会社にいって仕事をするのかしないのか、昼になれば、ラーメンを食べるのかカレーライスを食べるのか、午後になれば・・・・・・とにかく、すべて重大な「決断」です。

世間の皆さんは毎日この決断を繰り返しているわけですが、私にはこの「決断」ができないのです。

いわゆるひとつの「優柔不断」な性格なのです。

決断できる人が羨ましいとは心のどこかで思いつつも、「優柔不断」の何がいけないのだろう、と素朴に考えてみるのでした(一般にこれを「開き直り」と呼びます)。

昼ごはんに何を食べようか、迷いに迷って、いつもと同じ牛丼並盛と玉子を選んでしまう。

散髪に行って、「どうしますか?」と聞かれて、「いつものように適当に」と言って、とんでもない頭にされて「これでいいですか」と聞かれたら「はい・・・。大丈夫です・・・」と答えてしまう。

偶然、女性と食事に行く機会ができても、「何食べたい?ボクは何でもいいんだけど・・・」と言って女性を困らせてしまうという妄想をいだく。

夜の街で客引きに声を掛けられて、行く気もないお店に入って、呑む気もないのに飲んでしまった。

ケーキ屋さんでモンブランとショートケーキを頼んだのに、栗のタルトとシュークリームを箱に詰められても、まあよかたい。

文章を書いているうちに文体がどんどん変わっていっても気にしない、などなど。

優柔不断の例をあげるとキリがないのでもう止めよう。
でも、もう少し例をあげたほうが親切かもしれないから、もう少し書いた方がいいのかも。だけど、内容が無いよう、なので、読む人には苦痛かも。。。。とくよくよ悩む。

なんか意図せずに、だめな「優柔不断」の例ばかり書いてしまいました。
本当は「優柔不断」は「決断」とはまったく次元の違う洗練された生き方なのです。

「優柔不断」・・・書いて字の如く、優しく(物腰)柔らかく(無闇矢鱈に)断らないという聖人君子の態度なのです。

決断力が重視されるなら、優柔不断力も重要視されるべきなのです。
優柔不断力 八段。これが現在の私の実力です。

「何を虫のいいことを」と思っているそこの貴方、あなたには優柔不断力が欠けてると言えましょう。

そう言われて、私を「虫の好かない奴だ。虫酸が走る」などと思ってはいけません。あなたは虫も殺さぬいい人なのに、虫の居所が悪いだけです。腹の虫を納めてください。そういえば、腹の虫も鳴きますね。秋ですからね(意味不明)。

9月10日にiPhone6とiPhone6 Plusが発表されて、iPhone5sユーザーである私はあと1年の契約を残して解約するのか、このまま新規で1台増やすのか、はたまたキャリアとの契約のないSIMフリーのiPhoneを買った方がいいのか・・・。そしてiPhone6とiPhone6 Plusのどちらを選ぶべきなのか?

だめだ。。。決められない。。。

でも、ここは頑張って、SIMフリーのiPhone6Plusの128GB版を選択するという決断をしてみる。
なんと99,800円。。。財布が虫の息だ。。。というか死む。。。

結局、まったく関係のないAndroidのSIMフリー機を買ってしまうというのが、優柔不断という生き方なのでした。

201410f

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