第80回 「ろ」は「六月」の「ろ」

「ろ」は「ろくでなし」の「ろ」でもあります。

またまた締切を守れていません。社会人失格です。もはや「ろくでなし」の領域に達してしまいました。。。orz

ま、気を取り直して最近の出来事などをつらつらと。

5月28日
知人の会社の社員旅行が海外という景気のいい話を聞いたので、便乗させてもらうことにした。

パスポートのコピーが必要とのことなので、用意して送ったところ、なんと有効期限があと5ヶ月ほどしか残っていないので、使えないという。

6ヶ月以上有効期限がないと仮に日本を出国して相手の国に入国できたとしても、帰国時に彼の地で留め置きされることがあるらしい。というか、それは常識らしい。

そんなことを知らない私は常識外れのろくでなしという烙印を押されてしまった。パスポートの1ページが「ろくでなし」のスタンプが真っ赤になったのだ。

そんな不文律があるのなら、有効期限の6ヶ月前の期日を有効期限にすればいいのだ。

そんな提案をしたいけれど、管轄が外務省なのか総務省なのか国土交通省なのか内閣府なのか、よくわからない。

でも、その6ヶ月前に設定された有効期限の6ヶ月を切ると出国できないのならば、さらにその6ヶ月前の期日を有効期限とすべきだが、さらにその期限の6ヶ月前に出国ができないのなら、さらにその6ヶ月前に・・・と考えていくと結局パスポートの有効期限など設定できないことに気がついた。アキレスは亀に追いつけず、飛んでる矢を止まっているのだ(なんのこっちゃ)。

そんなつまらないことを考えるのはやめて、パスポート更新のためにパスポートセンターへ出かけた。

平日の午後12時30分のパスポートセンターは閑散としていた。
受付のお姉さんにパスポートの更新と告げると私のパスポートをパラパラめくり、「プッ」と笑うと「期限内更新ですね?現住所や本籍に変更ありませんか?」と聞かれたので、「はい」と答え、続いて「なんで吹き出したのですか?」と聞きたい気持ちを抑えてお姉さんを甘えるような目でみつめた。

「写真が1枚必要です。お持ちでなければ横の写真屋さんで撮ってください。
10分ほどかかりますので、その間に申請書を書いていただいて、写真が出来たら、一緒にお持ちください」

横の写真屋さんに行くと写真屋さんのお姉さんが笑いながら「写真ですね。2枚セットで1450円です」という。

心の中で「高い!」「パスポートセンターとグルなのか?」「なぜ笑う?」と悪態をつきながらお金を払うと、お姉さんに導かれるまま奥の撮影所に入った。

横に鏡があって「服装を確認してください(ついでに顔も)」とお姉さんが言う。(「顔も」とは別に言ってないがそんな気がしたのだ)

なんの変哲もない顔だが、濡れた子犬のような目をしていた自分がなんだか可哀想になった。

鞄を鏡の下に置くと、カメラ前のイスに座った。
「メガネを上げてください。右肩を上げて左肩を下げて」とお姉さんがいう。

メガネを上げて右肩を上げて左肩を下げてカラダを硬直させると、なんだか自分じゃない感じがする。

これでいいのかと思った瞬間「カシャ」とシャッターが切られた。
デジカメなのだろう、撮れ具合を確認したお姉さんは「プッ」と笑うと「もう一枚撮りますね」という。

「なんで吹き出したのですか?」と聞きたい気持ちを抑えて、またメガネを上げて右肩を上げて左肩を下げた。

「カシャ」

「はい、10分ほどでできますので、先に申請書を書いていてください」

お姉さんに見送られて、申請書を書きにパスポートセンターに戻る。

申請書に姓、名をローマ字で書くとミドルネームも書いてみた。一度書いてみたかったから。

写真ができた。
メガネが曲がっている。右肩が下がっている。襟がよれている。
こんな写真のパスポートをこれから10年使うの?

撮り直してほしい衝動に駆られたが、素材が素材なので諦めて、パスポートの窓口へと向かった。

誰もいないのに「番号札を取ってお待ちください」という。

番号札を取ったとたん「はい、どうぞ」と呼ばれて、そのまま席に着くと番号札を奪われた。

なんだか惜しい気がした。

彼らは一瞬だけ私のものになった番号札を奪うことが目的で番号札を引かせたのだ。

そう考えるとすべて辻褄が合うような気がしてきた。
最初からパスポートの更新などする気はなく、番号札が欲しかったのだ。

それで、どこにいってもお姉さんは「プッ」と吹き出していたのだ。
壮大な茶番なのか?それなら私も負けてはいない。だって申請書に嘘のミドルネームを書いたもんね。
という妄想に耽っているうちに窓口のお姉さんの説明は終わり、1週間後に1万数千円を持って窓口にくると新しいパスポートが貰える段取りになっていた。

パスポートセンターから外に出ると良い天気だった。
折しも大通公園ではライラック祭りの最中だった。ライラックというのは紫色の藤のような花で札幌の初夏の訪れを告げる花だ。リラとも言い、この時期急に寒くなると「リラ冷え」などという。渡辺淳一の小説に「リラ冷えの街」というのがあったような気もする。

でも、今年は5月の気温が高かったので、ライラックは早くに咲いてしまい、今は枯れた残骸だけが残っている。
「ライラック祭り」の垂れ幕が寂しい。

そんな大通公園を歩いてくと、賑やかな一角にぶつかった。
そこでは北海道産ワインと北海道の食材をテントの店舗で提供する「ワインガーデン2015リラマリアージュ」なるイベントをやっていたのだ。

ここで会ったが百年目。仇とするワインを討たねばならぬ。
ということで昼間からワインと牛タンのアヒージョをいただくのだった。

みなさんが仕事をしている平日の昼間からお酒を飲むなんて、やっぱり「ろくでなし」なのだった。。。

201506f

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