RCサクセション「甲州街道はもう秋なのさ」(忌野清志郎-肝沢幅一)76POLYDOR

30年間衰えることなく創作活動を続ける忌野清志郎。
「ハード!」フォーク~R&B~ロックと、表面上のスタイルは少しずつ変えながらも、作曲の肝の源泉はどっしり変わらない。日本オリジンの「和ロック」の天才です。

数多いアルバムの中でも最高傑作が本作収録の「シングルマン」。
80年代初頭のエレキ化による「復活期」以降、類型的な露悪さが、ちょっと一般から外れたい一般人の人気を獲得したわけですが、この頃の詞とヴォーカルは本当に純粋です。青いところを全く隠していない潔さが胸を打ちます。

「甲州街道」「秋」「ハンドル」の3語だけで、情景、ひいては心象風景を描写し、「ぼくもうまっぴらだよ」「うそばっかり」といったすごくストレートな拒絶の言葉が、悲痛な清志郎の声で繰り返されます。

アレンジは元モップスの星勝。
アコースティックギターとウッドベースが舗装道路や街路樹だとすれば、重厚で寂しいストリングスはどんより曇った空と秋の冷たい空気でしょう。