中森明菜 「スローモーション」02ユニバーサルミュージック

昨年出たセルフカバーアルバム『歌姫ダブルディケイド』のラスト。

ラテンやスカの曲が続いた最後を、しっとりボサノバでしめくくっています。

「ダブルディケイド」前、80年代のトップアイドル時代は、声量が結構あって、パワーのあるヴォーカルで次々ヒットをとばしていた記憶がありますが、久しぶりに聴いた彼女のヴォーカルは何ともすっかり「大人」。一聴、印象が薄い。弱い。派手なラテンの曲でも声がグングン前に出て来る感じじゃない。

絶対値は少ないんだけど、よくよく聴くと枯れたツヤと繊細な襞が微妙に流れる「声」。
第一義的な歌のうまさをあえて、失ったかわりに「歌姫」としての代替の絶対きかない真髄を獲得しています。

久しぶりに「名曲」さを再確認させる、来生姉弟の素晴らしいソングライティングが彼女の真の才能をたおやかに彩っています。

少女の淡い心の動きを客観的にかすめとった歌詞と、日本の「普通」のポップミュージックのレベルの高さを実感させる流麗なメロディー。
これから、今とはまた違った顔でこの珠玉を歌い継いでいくのが楽しみです。