岩崎宏美 「未来」 (阿久 悠ー筒美京平)75Victor

30年以上にわたってヒット曲を量産し続けている筒美京平先生。通算の曲数は2,500曲を超えているらしいです。
その長いキャリアで最もキレまくっていたのが70年代でしょう。
80年代以降の先生は編曲(アレンジ)をあまりしなくなり、作曲に専念しています。メロディーの魅力は発揮しつづけますが、そこに「京平サウンド」が伴っていない。

70年代の「京平サウンド」は前半=A&M風ソフトロック。後半=ディスコ歌謡といったところ。時代の旬を歌謡曲に翻訳するセンスが絶妙です。

「未来」はディスコ歌謡黎明期の大傑作。ディスコは、泥臭かったR&Bやソウルを「ベタ」に洗練させた音楽といえますが、本場米国産をさらにベタ化+洗練させてキッチリ「歌謡曲」という商品に仕上げています。

堅く鳴り、ファンクの神髄を貫くスネア。小刻みなハイハット。和風なメロディーを過剰な流麗さで奏でるストリングス。サウンドは結構本格派です。でも、もちろんフェイク。歌謡曲ですから。
このサウンドの中をすこやかに流れ、支配する、岩崎宏美のヴォーカルの伸びやかさ、ピュアネスも素晴らしい。

そして先生のメロディー。ポジティブさとせつなさのチェンジオブペース。老若男女のハートを鷲づかみにして溶かすイケナイ業師、極まれり。