吉川晃司 『LA VIE EN ROSE』 (売野雅勇/大沢誉志幸) 84SMS

日本武道館で、吉川晃司を観ました。35周年ライブということで、特にデビュー当時の曲を多く歌い、まさかのCOMPLEXのナンバーも披露。キャリアを振り返る構成でした。

しかし、生で観る吉川はやはりかっこいい。長身かつたくましい体躯で歌い、ギターを弾き、ジャンプする53歳。そして歌も滅法巧い。ふくよかな低音と煌びやかな高音を悠々と使い分ける余裕シャクシャクの姿は、自信に満ち溢れているように見えました。

しかし、MCになると、意外にも弱気なトーン。いわく「疎外されまくっている人生ですよ。」ルックスの偉丈夫さに全く似合わない、自虐ぶりです。

思えば、鳴り物入りの超大型新人として、生意気いっぱいだった吉川は、結局「大物」になるほどのカリスマも、「マエストロ」になるほどの音楽的才能もなかったわけです。

安定して良きロックを奏でる中堅アーティスト。この盤石なステイタスが本人としては不満なのでしょう。

ロックンロールの破滅的な攻撃力、危ういバランスを保つなかで生まれる芸術性。そういったものに死ぬほど憧れながらも、自らが普通のかっこいい男であることに何度も気づき、そんな自分を打ち破れない。

53歳からでも遅くないので、殻を破ってカッコ悪さをさらけ出す吉川を見ててみたいし、まだそんなことをやりそうな気配も感じた日本武道館でした。

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