2005年以降、バンド編成での歌ものに回帰し、幼少期の音楽体験に根差しているのであろう、カントリー&ウェスタンやリズム&ブルースを歌っている細野晴臣。20年以上のブランクを経たヴォーカルは、老境に差し掛かったブルースマンのように、滋味深く摩耗され、アーリーアメリカンの味わいを強めるバンドアンサンブルと奏功して、70歳を超えた今、何度目かの全盛期を迎えている。

そんな細野の50周年ライブを東京国際フォーラムで観た。特筆すべきは、高田漣のペダルスチールギター。珍しい楽器だけに、あまり生演奏を聴いたことがないが、なんといっても、明朗で快活な音。高音が華やかな響きは、例えばブルースギターの凄みのある暗鬱さとは対照的に、パッと明るく聴く者の心を照らす。

この楽器はハワイで産まれ、ハワイアンの能天気な音楽に多用されているが、カントリーやブギなどの米国本土の渋い音楽に使われることで、黒いリズムのしたたかさと絶妙なコントラストを見せる。

50年という年月の重みなどサラサラ見せずに、力の抜けた好々爺とした佇まいながら、米国音楽のルーツを再度咀嚼して、彼にしか出せない音を堂々と出し続ける細野。過去の遺産を縮小再生産しているだけの音楽がはびこる今こそ、絶対に聴くべきだ。

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