「最後のkiss」(小泉今日子/Ebby)1991Victor

恋は、必ず終わる。人は恋することで自分を知り、愛することで成長する。そして、あんなに手に入れたかった高嶺が、ふと、凡庸に見える瞬間が訪れる。

アルバム「Afropia」は、小泉の最高傑作であるばかりでなく、綿々と続く日本文学の白眉と言ってもいい。ハイブリッドを旨とする日本歌謡の到達点であり、これをもって歌謡曲は終了した。

「最後のkiss」の小泉は、最愛の恋人との優しい恋情の瞬間に、この上ない幸福を感じている。しかし同時に、この至福が遠くない将来、終わりを迎えることを、はっきりと予感している。いや、予感ではなく、冷たく確信している。
彼女の視線は、恋人の目を優しく見つめるが、永遠の恋を望みはしない。移ろうこころを、引き留めない。

至福は決して続かない。続かないからこそ、至福なのだ。しかし、至福の記憶だけは、永遠に色あせない。

25歳の小泉今日子は、その普遍を噛みしめた。