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23万世帯からの注文を集中化する受注センターの構築

私たちの身近にある生協--生活協同組合ひろしま様では、無店舗販売を中心に店舗販売も含めて広島県内33万世帯の組合員様に、安全な食品や日用品などをご提供されています。

生協といえば、地域で班単位による共同購入というイメージがありましたが、近年では個人宅配がメインとのこと。

ライフスタイルの変化に伴い、無店舗(カタログ)販売という販売形態が以前より積極的に活用される昨今、カタログによる無店舗販売が事業の中心となっています。

システム導入のきっかけ

センター長 倉田様

33万世帯の組合員様のうち、約23万世帯が無店舗販売をご利用されています。

無店舗販売の仕組みは、組合員様に毎週定曜日の商品配送時に翌週注文分のカタログとOCR用紙を配布し、組合員様は翌週の配送日までにOCR用紙に注文内容を記入して、配送時にOCR用紙を提出します。ご注文頂いた商品は翌週、広島県内に17ヶ所ある支所から各々担当のドライバーが定曜日、定時に商品を配達します。

従来は各支所で担当者が持ち帰ったOCR用紙を支所ごとにOCR読取機で受注処理し、ホストコンピューターにデータを送信していました。

また、組合員様へ直接ご注文を伺う「逆電」と呼ばれるフォローコールも、配達から戻ったドライバー自らが行っていました。

最近はドライバーが持ち帰るOCR用紙に加え、インターネットや通信機器の普及により、電話、FAX、インターネットなど受注形態が多様化し、受注処理は煩雑化する一方でした。

支所での受注処理にコストと時間がかかりすぎる、支所に直接かかってくるお客様からの問合せに対応しきれない、支所ごとのサービスレベルに格差がある。何よりも支所ごとに構築されたネットワークではシステム関連のランニングコストがかかりすぎるといった問題が深刻化してきたのです。

問合せ応対とご注文お伺いコールの集中化

数ある問題点の中から、担当の倉田センター長はOCR用紙の次に多かった組合員様からの”電話” による注文や担当者からの逆電、支所ごとに行っていた問い合わせ対応の効率化に焦点を絞ります。

2004年に入り、蓄積された受電(インバウンド)、逆電(アウトバウンド)のデータを分析し、これらの作業を効率的にこなせるCTIシステムを利用し、17支所ごとに行われていた全ての受注業務の集中化と外部委託していた夜間の電話受注対応を全て統合した受注センターの構築を検討し始めました。

いくつかあった他県の生協様の導入事例を参考に、受注業務の効率化をさまざまな角度から検討を始めましたが、他生協のシステムをそのまま導入するにはコストと時間がかかるとの判断で、一度はCTIシステムの導入は見送る方向で話が進んでいました。

しかし、導入後のオペレーションコストを考えて「生協ひろしまに合うCTI機能を持った独自のシステム構築」 をローコストで短期間に導入できないかと再検討に入りました。
そして、BIG顧客管理Pro CTIに出会い、低コストで、受電・逆電までフォローでき、項目設計や変更を、自社で容易にできる点が決め手となり、検討から導入までわずか2ヶ月間で、生協ひろしま事務処理センターに、独自の受注システムを構築されました。

受注センターの業務内容

注文は、やはりOCR用紙がメインです。

支所に置かれていたOCR読取機を事務処理センターに集中化することで40%のOCR読取機の削減を可能にし、通常、1日に3万件ほどある注文用紙を午前中に一気に処理を行います。

電話注文等の着信数は週に7500件程度あり、その内注文件数が約4000件で注文以外の配送や商品に関する問い合わせが約3500件有ります。また、逆電による発信数は週に7000件程度有り、その内、通話件数が約4500件で注文件数が約1500件です。こうした電話による受電、逆電をMAX19名のオペレータが8:30~23:00まで対応します。CTIによるインバウンドで組合員様の確認が出来次第、受注システムに受注内容を入力します。

FAXによるご注文は週に4000件程度あり、これをFAX-OCRというシステムを導入して効率的な処理とイメージデータの蓄積を行っています。

本格的なコールセンターの構築には、組織全体の体制を見直す必要があり、今回は第一段階として、事務処理センターにかかってくる問い合わせに関しては、あくまで一時受付的な役割と位置付け、問い合わせ内容を支所にメールで連絡するまでにとどめているようです。このように段階を踏むことにより、問題を早期発見し、組合員様の声に迅速に対応できているのでしょう。

逆電に関しては、従来、配達から戻ったドライバーが1件ずつコールしていたものを事務処理センターで一元化し、1週間に5500件ほどある逆電依頼データを時間帯ごとに変化するオペレータの人数に均等に割り振るカスタマイズをし、オートコールにより業務の効率化を図っています。

システム導入効果

集中化するにあたり、まずグループ全体のインフラ再構築から始まりました。
稼働率にかかわらず全ての支所に構築されたサーバー/クライアントシステムを撤廃、不要になったPCを事務処理センターに引き取ることで、イニシャルコストを大幅に抑えることができました。

これに伴い、支所ごとに費やされていたハード保守費用やシステムのメンテナンス費用などのランニングコストも大幅に削減できました。

また、支所の中でも大きな負担となっていたOCR用紙の処理業務や組織伝票の入力業務、さらには電話、FAXによる受注業務や問い合わせ業務を事務処理センターに集中化したため、支所の事務員も半数まで削減でき、さらに配達後にドライバーが行っていた逆電を事務処理センターに依頼することにより残業時間も減り、人的コストも大幅に削減できました。

システムを一元化するにあたり、OCR読取、CTIによるインバウンド・アウトバウンド・問い合わせ対応、受注システムを使った受注処理、組織伝票の入力業務を全てのPCで行えるようメニューを統一し、業務の集中する時間帯に合わせてオペレータがフレキシブルに全ての業務をこなせるように教育されました。

これにより、受注の電話が集中する午前中はインバウンド業務、配送が終わって未回収の組合員様への逆電が集中する夕刻にはアウトバウンド業務・・・という様に時間帯別、機能別に作業を集中、分散することができ、稼働率や生産性も大幅に向上したそうです。

現在の課題

業務効率化、生産性向上に関してとても熱心な倉田センター長は、 「正しい分析をするためには、通話に関する詳細なログが不可欠」 とお考えのようです。受注数と問い合わせ数の集計や、受電・逆電数の集計、そして19名のオペレータの通話記録をより簡単に、リアルタイムで出せれば、との課題を挙げられます。

「ブースの中で仕事をしているオペレータを1日中監視することは不可能です。しかし、通話ログを提示することで、”見られている”という意識をオペレータに植えつけることはできます。

そして、時間あたりの発信件数、通話時間などデータに基づいた評価や、OJTにも役立てたいと考えています。8:00-23:00までフル稼働で、特定多数のオペレータによって使われている電話。

この、業務のブラックボックスになり得る電話のログデータを明示し、教育と評価に利用することでオペレータの生産性は更に向上するでしょう」
と倉田センター長は語ります。

今後の展望

受注センターが本稼動して数ヶ月経ち、課題や改善すべき点が明確となった現在、課題をひとつずつクリアすることで、他県の生協様のコールセンターシステムと遜色のないシステムになるであろうと確信されている生協ひろしま様。

今後は、通話時間短縮のためのオペレーションマニュアルの徹底、受注、問い合わせを事前に振り分けるIVRの導入、ECサイトからの受注メールの取り込みなど、様々な業務効率化策を検討されています。

また、個人情報保護に対する取り組みや、組合員様が利用しやすいECサイトの構築など、組合員様へのサービス向上にも積極的に取り組んでいきたいとのことです。

受注センターに寄せられる生の声を反映させながら、今後も地域密着型のサービスで組合員様の生活に貢献され続けることでしょう。