印刷

二代目社長から生まれた新しいビジネス「とうふの通販」

京都北野天満宮のほど近くに、モダンな雰囲気が印象的なとうふ屋があります。昭和39年創業、設立45年を迎えた京とうふ藤野様は、先代である会長が京都というとうふの名産地で開業しました。

45年という歴史は、京都という街では決して古くなく、「むしろ、周りの老舗さんに比べるとうちはまだまだ。」と、通販部門担当の跡部さんは語ります。

先代がとうふ屋を始めたのは、現在の本社、北野天満宮畔の一条通沿いでした。

とうふ屋は、朝早くから営業して午前中にはひと段落つくので、現社長と専務の2人で昼過ぎから岩倉で食事処を始めました。材料の用意出来るだけ、自分達が出来る範囲でという限られた条件で、1日1~2組程度のお客様のみお相手する、というスタイルで営業されていました。そしてそのホスピタリティと味が認められ、後にJR京都駅の伊勢丹などにも食事処出店することとなります。

とうふを使ったデザート、豆乳レアチーズケーキや黒豆コーヒーなどを出す『TOFU-CAFE FUJINO』は、京都北野店以外に六本木ヒルズにも出店。地元京都よりとうふに馴染みの薄い関東の方にも、その名を広めています。六本木ヒルズ店は特に、京都ブランドの本場のとうふを味わうことが出来ると、若い世代に好評のようです。

様々な年代のお客様に、おいしいとうふを楽しんでもらいたいという気持ちが膨らみ、新しい試みも惜しまずおよそ20年という時間をかけて『京とうふ藤野』ブランドを確立してきました。その結果、直営店13店舗、路面店、百貨店・スーパーへの卸などの多角的な経営をするとうふ屋として、現在に至ります。

 

 

通販ビジネスへの参画

とうふ業界ではいち早くはじめた通販は、最初はFAXや電話での受注でした。しかし、時代の流れからネット通販にも参画。2年ほど前から本格的に大手ショッピングサイトで全国のご家庭に通販されています。

“通信販売でおとうふを売る”という、2代目社長の新しい考えは、その姿がインターネットに変わっても、15年ほど前から藤野のおとうふを通販で買い続けてきたお得意様にも、自然に受け入れられたようです。

お中元・お歳暮の時期には、最近注目されている「産直ギフト」として、京都ブランドである藤野のおとうふは特に需要が高くなります。その他、昔からのお得意様からの自家需要も常にあり、関西以外では関東からのご注文が多いとのことです。

自社サイトでの通販ではなく、大手ショッピングサイトへの出店をしており、メルマガ配信や広告を出稿した際に顕著に反響が現れるそうです。

システム導入のきっかけ

システム会社に相談し、オーダーメイドのシステムを構築したのが7年前。「当時は、立ち上げたばかりの通販ビジネスを、社内で考えたやり方でやっており、その、自社で考え出した業務の流れを、そのままシステムに反映させていました。システム会社も特に通販業務に精通していた訳ではなく、当社の要望どおりにシステムを構築して頂いたのですが・・・。」

結局、すべてオーダーメイドでは、他社がどのような流れでやっているかといったノウハウがわからず、「本当にこのやり方が最善なのか?」「ミスをなくすにはどうすればいいのか?」という疑問は残しながらも、人力でなんとかカバーし続けていました。しかし、人力でカバーしていた今までのシステムでは、どうしてもヒューマンエラーが起こります。本来、システムはヒューマンエラーを防ぐための道具にならないといけない、そういった無理を解消したい、とシステムの入れ替えを検討し始めました。

「システムの入れ替えにあたり、逆転の発想をしました。オーダーメイドシステムは、自社の業務をそのままシステム化出来るという利点がある反面、同じように通販事業を営んでいる他社はどのような処理をしているのかはわからなかったわけです。

パッケージソフトであれば、他社の導入実績もあり、お客様の要望によって何度も改良がなされてきたはずですから、通販管理としてはスタンダードだと言えます。前回は、自社の作り上げたルールに合わせたシステムの構築をしましたが、今回は、ある部分はパッケージソフトに合わせて自社の業務を変える、変えてはいけない部分はカスタマイズする、という方向に転換しました。」と跡部さん。

システム導入効果

これまでのオーダーメイドシステムからパッケージソフトへの切り替えに伴い、ご本人も含め、これまで当たり前のように行ってきた業務を新しいやり方に変更するには努力が必要だった、と跡部さんは振り返ります。

「これまでこうだったから、このやり方でないと困る。」という考えをまずスタッフに改めてもらい、思い切ってパッケージソフトに合わせてみました。すると、オペレーションが格段に早くなったそうです。

これまで、多いときで500~600件の受注を始業時間の9:00からオペレータ4・5名で受注伝票を入力し始めて、大体18:00くらいまでかかっていました。そして、18:00からチェックとなり、残業も多かったそうですが、BIG通販Proの導入で、16:00の出荷締め切り時間に間に合うようになった、とのことです。

標準機能とカスタマイズ機能の有効活用

パッケージソフトに合わせて運用を変えつつ、これまでのシステムの機能をそのまま引き継ぎたいという部分は、カスタマイズで対応しています。

同社は百貨店に出店しているため、独自のカスタマイズをしています。百貨店の産直ギフトに関しては、百貨店で受け付けをして、百貨店から委託を受けて本社のほうで処理をします。代金は店頭で既に回収済みのため、本社で処理するときには“百貨店売上”にチェックするだけで、自動的に入金処理をされるようにしています。お客様は、百貨店との間ですでに売買を成立させているため、万が一間違えてそのお客様に請求がいくようなことがあってはならないのです。お客様・百貨店とのトラブルを防ぐため、特にこの部分に気を使われているようです。

その他、食品の配達にまつわるさまざまなパターンの送り状(常温・クールなど)の発行ができるようにされています。手書きで対応していた以前は、送り状への記入漏れが発生し、宅配便会社に集荷してもらえないということもありました。しかし、BIG通販Proでは自動的に印字されるため、そういったミスがなくなりました。

最終的に出荷依頼をする前に、入力ミスがないかを入念にチェックします。伝票入力時に入力した担当者コードで検索し、自分の入力した分のリストを出力。自分の入力した伝票は、責任を持って最後までチェックします。

入力ミスがなければ、送り状・受注伝票にピッキングリストを添えて、工場に出荷依頼をします。

以上の工程を、いかに少ないオペレータで効率よくまわしていくか。システム入れ替えによる効果が現れ始めた現在、次なる目標を見つけられたようです。

今後の展望

現在は、 ECの注文が増加してきているため、電話よりもメール注文のほうが多いそうです。導入システムには、CTI機能もついていますが、当面は、CTIの構築よりも現在出店している大手ショッピングモール事業に更に力を入れ、顧客の拡充を図ることが課題のようです。

システムの入れ替えによってミスが軽減し、新しい事業の企画に割く時間が出来たので、オペレータを含めたメンバーで、新しいメニュー作りや事業の展開について検討したいと跡部さんは語ります。

老舗の伝統にとらわれず、若い世代や女性の心をつかむメニュー展開でとうふブームのさきがけを築いてきた同社。京都という古い町から、再び新しい“とうふビジネス”が生まれるのは、もうすぐかもしれません。