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コールセンター、B2B、EC、多様化する受注チャネルをBIG通販Proで一元管理

山形市蔵王松ヶ丘、東北中央自動車道の山形上山ICを降りてすぐの好立地に、「シベール・ファクトリー・メゾン」があります。

広大な敷地の「シベール・ファクトリー・メゾン」では、ラスク工場の見学で楽しみ、レストランでおいしいイタリアンを食べ、カフェで和み、焼き立てのパンやラスクなどを購入できます。

また、文化事業にも積極的に参画されており、音楽や演劇を楽しめるアリーナや図書館、料理教室なども併設され、地元だけでなく観光のお客様も多く訪れる人気スポットとなっています。

「シベール・ファクトリー・メゾン」は、贈答用ラスクの先駆者、株式会社シベール様(以下、シベール様)が運用されており、全国の店舗を統括する本社も敷地内に構えられています。

“幻のラスク”の誕生

シベール様の創業は、1966年。
和菓子屋の二代目として生を受けた創立者熊谷眞一氏は、家業である和菓子屋を継ぐという選択はせず、当時山形市内に存在しなかった洋菓子専門店を一念発起して起業されました。

めずらしい洋菓子専門店「シベール」は順調に軌道にのり、市内に数店舗を構えるまでに成長。しかし、しばらくすると山形市内に洋菓子店の競合が増え始め、飽和状態に陥ってしまいます。

創業から10年が経過した1977年のこと。
以前横浜に赴任していたという常連のお客様から、近所でこれほどおいしいケーキを食べられるとは思ってもみなかった、と絶賛されました。しかし、おいしいパンがないのが残念でならない、洋菓子店「シベール」で作ってくれないか?と提案されたそうです。

そんな折、熊谷氏が業界の勉強会でコペンハーゲンに立ち寄った際、まだ薄暗い街の中、ぽつんと明かりを灯す一件のパン屋を見て、まるで街のオアシスのようだと感じたそうです。そして日本に帰国し、洋菓子店の1店舗を改造してパン屋にすることを決意。すぐにパンの勉強に取り掛かり、1977年にパン屋をオープンされました。

しかし、転勤族だった常連のお客様もいつの間にか転勤され、まだまだ日本の食卓にはモダン過ぎたフランスパンが売れ残ることが多くなってしまったそうです。

フランスパンを無駄にせず、おいしく食べるためにラスクを作り、販売をスタート。こちらは大好評で、売れ残ったパンがあった時のみ製造されるそのお菓子は“幻のラスク”と呼ばれ、予約が入るほどでした。

パン屋の創業時に“師匠”から教わったフランスパンは、古典的な製法のフランスパンより軽めで、現代的なものでした。この時の師匠の教えが、のちに爆発的なヒットを遂げるラスクの運命の分かれ道だったのかもしれません。そのフランスパンは、ラスクを作るのにぴったりだったのです。

ラスクを高級贈答品として全国へ展開

そんなとき、ちょうど洋菓子店の飽和状態と重なります。飽和状態を脱却するためにと熊谷氏が次に狙ったのが、通販による全国展開という新たな道でした。

そして、全国展開する通販商材としてスポットを浴びたのが、他ならぬ“ラスク”でした。

“幻のラスク”としての人気や日持ちする点など、総合的に見て通販で展開するのにラスクが最適だったのです。

同社は、本気でラスクを全国展開することに社運を賭けます。

これまでフランスパンが売れ残ってしまったときにだけ作られてきた“幻のラスク”でしたが、ラスクをつくるためのパンを焼く、という逆転の発想に転換したのです。

しかしこの逆転の発想で“ラスク用のパン”を焼くことに、パン職人のみなさんから反発を受けたそうです。そこで、固くなったパンと焼きたてのパンで作り比べ、納得のいくまで職人と話し合い、協力を得て現在に至ります。

そして製造ラインを整え、1994年、いよいよ全国展開が始まりました。

ラスクを贈答用の高級菓子として捉え、ラスクのためにパンを焼き、個別包装や化粧箱入りなどこれまでになかった新たなスタイルで販売を開始されたのはシベール様が全国初。

今や、個別包装されたラスクはお土産や贈答品としての定番となりました。

「お取り寄せという言葉が誕生したのが1990年代、意識したつもりはあまりなかったのですが、思い返してみるとお取り寄せブームと当社の成長がぴったり合うんです。

さまざまなメディアに取り上げられたこともあり、ここまで成長してこられたと思っています。」(常務取締役 本田 政信様)

創業者である熊谷氏の構想どおり、“通販”による商品展開をきっかけに、現在では全国に24店舗(山形地区11店、仙台地区8店、東京3店、名古屋1店、富山1店)、3工場(山形地区2ケ所、仙台地区1ケ所)を構えるまでに事業を拡大されました。

 

JSOX法導入に合わせてシステムを刷新

そんなシベール様が、通販業務を支える販売管理システムの刷新を図られたのが2008年 夏頃のこと。システム刷新のいきさつについて、常務取締役の本田様は次のように語ります。

「通販による商品の提供を始めた際に構築したシステムはオリジナルのもので、当社の業務にぴったり合ったものでした。しかし、時間の経過でシステムは老朽化し、日々新しくなるハードウェアへの対応などに困っていました。 また、JSOX法導入に伴い、販売管理上のさまざまな集計の根拠といったシステムの正当化が求められました。

おのずとシステムの刷新が必要となったのですが、それまで使っていたオリジナルシステムでは、計算方法などを正当化するのには大変な労力が必要だったんです。
オリジナルシステムを一から作り直すのであれば、導入実績の豊富なパッケージソフトをベースとしたシステムのほうがふさわしいと考えました。」

そして、2009年5月、BIG通販Proをベースとしたシステムを導入。
さまざまな機能のカスタマイズを経て、全社で30クライント(受注センター 20クライアント(うちEC受付 3クライアント)、卸売/入金業務を行う管理部門で5クライアント、本部 2クライアント)) をご利用いただいています。

セミオリジナルの”BIG通販Pro”

BIG通販Pro採用のポイントとして、大きく3つのポイントを挙げられています。

まず、最大の目的であった導入実績のあるパッケージソフトであること。
2点目は自社独自の業務をシステムに反映するため、柔軟にカスタマイズができること。
3点目は、1点目と同様パッケージソフトの利点でもある標準機能でした。中でも、コールセンターに不可欠なCTI機能や、売掛管理、請求書発行の出来る卸売機能についてご評価いただきました。

そして、パッケージソフトの標準機能に加え、これまでシベール様で培われてきた業務ノウハウやアイディアのぎっしり詰まった、セミオリジナルと呼ぶべき“BIG通販Pro”での業務がスタートしました。

コールセンター、B2B、EC、 多様化する受注チャネルをBIG通販Proで一元管理

シベール様の受注センターでは、CTIシステムを利用した電話注文(コールセンター)およびEC、FAX、はがきによる注文を一元して受け付けられています。

時期により変動しますが、コールセンターでは最大20クライアントをフル稼働して全国のお客様からの電話注文を受け付けます。

受注センター 課長 目黒様

「当社のコールセンターでは、電話でお客様と接する以上、正社員からパートまでスタッフ全員が“プロ”という意識を持つよう努めています。 100%は無理でも、精一杯の気持ちを込めて対応することを教育し、徹底しています。」
(PIS販売課 課長 目黒様)

コールセンターでは、意識統一のために毎日会社の理念やビジョンの読み合わせを実施。お客様第一主義を貫いてきた創業者の思想を、スタッフが一丸となって継承されています。

電話注文の様子をうかがっていると、オペレータのみなさんは、お客様の情報や商品確認を実にスムーズにこなされていました。

シベール様の取扱商品点数は約100件。
シーズンごとに変わるフレーバーやバラエティなど豊富なラインナップを取り揃えられていますが、手元のパンフレットやBIG通販Proの商品マスタの商品画像を確認しながらテキパキと流れるように受注を処理していきます。

通話中、ほとんどメモを取ることなく、受注画面のみで受付をされていたオペレータの松田様にBIG通販Proの使い勝手について聞いてみました。

「電話で注文を受ける際、受注伝票上にさまざまな警告メッセージが出るところが便利ですね。例えば、お客様の指定された配送日・時間に間に合うかどうかといった警告や、配送地域別の送料といった情報、お客様別の注意メモなどが自動表示され、こちらからアクションを起こすことなく気づきを促してくれます。

また、1週間以内に注文があった場合の前回の受注内容や出荷状況、入金状況なども確認しながら注文を受けることができます。」

「当社の業務ルールに従ってさまざまな警告を出す、という機能はオペレータが業務を行う上で付加価値だと思っています。他にも、贈答用の“のし”や、商品に同梱する“メッセージカード”の自動印刷も便利になった機能のひとつです。」(目黒様)

オペレータを育成する立場である目黒様も、警告メッセージが出ることにより、新人オペレータを教育する際に教え忘れることがなくなったとご評価いただきました。

旧システムで実現されていた独自業務のほとんどを、BIG通販Proのカスタマイズによって継承した同社。受注センターを中心としたスタッフのみなさんとイリイのスタッフが一丸となり、トライ&エラーを繰り返しながら作り上げてきました。
運用が開始された現在も、よりよいシステムにするための進化は続いています。

製造・出荷部門

シベール様の商品は、敷地内にある製造部門で作られています。日々の製造量に関しては、BIG通販Proの受注データを製造管理システムに取り込み、注文状況により生産予測を立てて過不足のない製造を実現されています。

製造部門のBIG通販Proのクライアントでは、受注センターの受注状況をリアルタイムで把握。受注センターからの出荷指示書(ピッキングリスト)に従って商品をピッキングします。

繁忙期には、9台のハンディターミナルがフル稼働するそうです。

ピッキング業務はハンディターミナルで出荷指示書と商品バーコードを照合することで出荷明細を消しこみ。1点ずつ検品して箱詰めします。

この、箱詰め作業についてもシベール様のアイディアが反映されています。 BIG通販Proでカスタマイズした“箱容量自動計算”機能により、注文数とパッケージの大きさを計算し、どのサイズの段ボールが最適か受注時にオペレータがセット。箱詰めしてから商品が入りきらず、また段ボールを組み立てるといった無駄な作業がなくなります。

物流は、ヤマト運輸を利用。送り状は、受注センターで作成するピッキングリストと同じ用紙に印字されています。バーコード付きの送り状はシベール様オリジナルのもので、 ハンディターミナルで荷物とピッキングリストを照合しています。配達状況確認のための送り状番号はBIG通販Proで採番し、リスト化してデータでヤマト運輸に送ります。徹底的な業務効率化で発注~納品までのリードタイムを短縮し、ミスのない出荷を実現することでお客様に貢献する、ここにも創業者の“お客様第一主義”が根付いていました。

今後の展望

常務取締役 本田様

通販による贈答用ラスクの全国展開を機に、これまでさまざまなチャレンジをされてきた同社に今後の展望を聞いてみました。

「インターネットがあたりまえの時代になり、若い人からお年寄りまで幅広い世代が通販でモノを買う時代になってきました。

高齢者も最近ではネットショッピングに慣れてきたとはいえ、わかりづらいサイトではお客様の足が遠のいてしまいます。今後は高齢化社会に向け、高年齢層にもわかりやすい通販サイトを構築することも重要だと考えています。もっともこれは、当社だけでなく日本全体の課題なんですけどね。」(本田様)

 

同社のブログやメルマガは全国のスタッフが協力して記事を書いて発信されており、個性さまざま楽しいものになっています。
「堅苦しい情報や商品の宣伝ばかり発信してもお客様は喜びません。なるべく楽しい話題を提供しながらお客様とコミュニケーションを取り、お客様が望んでいることを少しずつ積み上げていきたいと考えています。」と本田様は語ります。

今後は、タブレットPCやスマートフォンへの対応、ソーシャルメディアへの参入といった新技術を取り入れていくことと、これまで続けてきたスタッフによる“手作り感”、バランスを保ちながら展開していきたいとのことです。

今回、PIS事業部(全国単品無店舗型販売)のトップである本田様をはじめ、コールセンター、出荷部門など通販事業における重要な部門それぞれを取材させていただきましたが、どの部門でも共通して感じたことがありました。それは、“お客様第一主義”という創業者の理念がスタッフひとりひとりにしっかりと根付き、みなさんがお客様の方向を向いて業務をされているということ。

シベール様は、全スタッフにしっかり根付いた企業理念のもと、地元 山形をはじめ全国のお客様の方向を向いて、これからも新しい食文化の提供に貢献されていくことでしょう。