東日本大震災からわずか2週間で笹かま工場の再建をスタート オフコンからパッケージシステムへの入れ替えでコストと開発期間を削減
仙台市内からほど近い穏やかな港町、宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)に株式会社 佐々直様の本社はありました。
仙台名物、笹かまの製造・販売の老舗である佐々直様のスタートは大正5年まで遡ります。
仙台藩、伊達家直轄の漁港として栄えた由緒ある閖上港で漁獲されるヒラメの保存食として生まれたという笹かま。
笹かまは仙台の名産品となり、お土産や贈答などの用途で全国的に有名になりました。
竹串に差してそのまま焼き上げた「手のひら蒲鉾」は佐々直様のオリジナル商品で、笹かまのルーツとも言われている伝統の逸品です。
現在の社長、佐々木直哉氏で3代目となる長い歴史を持つ同社は口コミなどで徐々にファンを増やし、「佐々直のかまぼこ」は直売店3店舗の他、仙台の有名デパートやスーパー、新幹線や空港の売店など、どこに行っても見かける名物となりました。
株式会社 佐々直様では「笹かまの佐々直」の他に、魚の粕漬け「旬海漬(しゅんかいづけ)」というブランドも展開されています。
「旬海漬」は、旬の鮮魚を宮城の地酒吟醸粕と仙台味噌を合わせた秘伝の粕にじっくりと漬け込んだもの。
「旬海漬」も笹かまと同様、仙台のお土産やのご進物として人気の商品です。
順調に事業を拡大してきた佐々直様ですが、2011年3月11日の東日本大震災で発生した津波は閖上一帯も襲い、港の目の前にあった佐々直様の本社と主要工場が津波にさらされたのです。
2階建てだった本社の一階部分は津波被害により姿を失いましたが、奇跡的に躯体のみが残りました。
周り一帯が更地となった今でも、『佐々直』の看板を掲げたビルはそのままの形でシンボルとしてポツンと佇んでいます。
震災後のライン復旧まで
立ち止まっていても仕方がない。再建への決断はとても早いものでした。
震災発生から2週間。
閖上から遠く離れた東京でもまだ震災の影響で混乱が続いていた頃、仙台ではライフラインも完全に復旧していない状態で、閖上港から数キロ内陸に入った仙台市太白区の中田バイパス店横にある工場での業務再開を決断。
急ピッチでラインを整える工事を行い、4月20日には製造を再開しました。
しかし、震災前と同様の味がなかなか出せず、何度も何度もテストを繰り返してようやく佐々直ブランドの味を再現されました。
「幸いにも包装資材は残っていましたし、主原料の冷凍すり身はディーラーの皆さんに必死に集めて頂きました。電気が割と早く復旧したのも好材料でした。
新幹線の復旧(4月25日)に合わせて、当社も再スタートしようという目標を立てました。」そう語るのは専務取締役の佐々木市哉氏。
佐々直様の全国のファンからの心配の声を受け、震災後わずか1ヶ月半での営業再開を実現されました。
がれきの中からPCを探し出す
本社にあった業務用のパソコンが津波で流され、受注や出荷、お客様情報などの事務データもすべてダメになってしまったとあきらめていた時でした。
佐々直様オリジナルの販売管理システムをオフコンで設計された地元のシステム会社さんが、津波に浸かってしまったがれきの中から、なんとバックアップ用テープを見つけ出して復元してくれたそうです。
「今でもシステム会社さんには本当に感謝しています。でも、オフコンはずいぶん前のものだったし、データも完全に復旧できるわけでもなかったので、ちょうどいい機会なのでパッケージソフトに切り替えようということになったんです。」と佐々木専務。
上記の要因以外にも、オフコンでの再構築では一から構築するコストと時間がかかってしまうこと、自社の要望を100%備えたオーダーメイドのシステムでは他社のノウハウが吸収できないことを理由に、オフコンからパッケージソフトであるBIG通販Proに入れ替えをされました。
オフコンの機能をパッケージソフトで実現
オフコンは佐々直様の業務に100%合わせた形で設計されており、業務上大きな問題はありませんでした。
しかし、導入から10数年を経て通販サービスは合理化され、佐々直様の業務自体もスリム化されつつありました。
そのため、システムの入れ替えを機に、どこまでが同社にとって本当に必要な機能だったのかを精査されたそうです。
多くの機能を備えたオフコンの中から、不要な業務は排除し、必要な機能をパッケージソフトにどう置き換えるか。検討した結果、どうしても足りない機能がありました。
ひとつは、「詰め合わせ」機能です。
佐々直様には手のひら蒲鉾をはじめ、スタンダードな笹かまや揚げ蒲鉾、フワフワの触感が特徴のおとうふ蒲鉾などの商品がありますが、気軽にいろいろな味を試してほしいと始めたのが、オリジナルのサービスである「ベストチョイス」です。
「ベストチョイス」とは、注文時にお客様にお好きな商品を一定金額内で選んでもらい、箱詰めするサービス。
この「ベストチョイス」はオフコン導入時から独自に組み込んだサービスであったため、BIG通販Proではカスタマイズで対応しました。
電話注文時にお客様が詰め合わせをご要望された場合、受注伝票にはベストチョイスの「笹かま詰め合わせ」という商品コードを選択。その中にご要望の金額以内でお好きな商品を選ぶというしくみです。
商品別集計や出荷指示は「詰め合わせ」単位ではなく、商品ごとにバラして管理されます。
他にも、以前より使っていた宅配便の送り状システムに合わせた形の出荷指示書や独自の集計表などの機能を追加開発し、これまで使い慣れてきたオフコン利用時と変わらぬ使い勝手を実現されています。
オフコンからパッケージソフトに切り替えた感想を、実務担当の根本様に聞いてみました。
「以前使用していたオフコンから比べると、操作性は上がったと思います。
特に、集計は驚くほど速くなりました。以前は月報を出すのに1時間とか平気でかかっていましたからね。」(根本様)
オフコンでは請求締日を何か月も遡って請求書を印刷できたり、返品処理で数か月前の伝票の金額や数量を修正できたり、といった自由度がありました。一方、パッケージソフトでは数字の整合性をとるために、更新処理をしたあとの数字は変更できないなど、ある程度の制限があります。
そういった違いに最初は戸惑われたそうですが、今では間違った伝票の数字を修正するよりも、きちんと赤伝票を切ったほうが正しい経理方法なんだ、といった風に考えが変わってきたと根本様は語ります。
今後の展望
取材にお伺いしたのは6月。
ちょうどお中元シーズン前で、BIG通販Pro導入後にコツコツと入力してきた2年間分のデータを活用し、お客様に前回の贈答先の情報を事前に印刷した予約注文書を送付してご注文を促すといったプロモーション活動を行っている最中でした。
オフコンからのデータ移行を終え、日常業務の効率化をクリアしてようやく顧客情報の活用や分析というステージに移った同社。システムを利用する上での要望は、店舗でのタブレット利用と通販システムとの連携や無駄のない製造を実現するための製造予定表の搭載などを挙げられています。
震災直後の工場再スタート、混乱の中の業務システム入れ替えを経て、ようやく平常業務に戻られたのではないかとの問いには、「まだまだ、復興の途中です。」と語る佐々木専務。現在もまだ、震災の影響により製造・販売を休止している商品もあるといいます。
今後は、販売を休止している商品の提供再開に加え、季節感を取り込んだ新商品の開発などに力を入れ、震災前と変わらぬ商品展開とサービスの提供を目指すという同社。
想像もできないほど辛く大変な経験をされた佐々直様ですが、明るく前向きな社員のみなさんに支えられ、東北の笹かま「佐々直」の歴史は今後も続いていくことでしょう。